2016年5月15日日曜日

空の青



昔、好きだった女性がいました。とてもとても好きでした。彼女のためだったら、自分の命を投げ出してもいいと思えました。彼女のために自分の命を使うことができたら、それ以上の喜びはないと思いました。それくらい彼女のことは好きだったのです。愛していた、と言ってもいいかもしれません。
 
タイミングの違い?で彼女とは一緒になれませんでした。その後、彼女はどこか僕の知らない街で暮らしているのだと思っていました。この青空が続くどこかの空の下で彼女は僕の知らない誰かと、仲良く、楽しく。
 
青空を見るたびに彼女のことを思いました。僕が幸せにしてあげられなかった彼女のことを思いました。彼女も僕と同じことを思っていてくれていると良い、と期待しました。
 
 
しかし、今日、彼女が10年前に亡くなっていたことを知りました。さっぱりした性格の彼女らしく、すっと この世界の青空の下からいなくなったそうです。
  
 
そうか、と僕は思いました。
  
 
彼女もこの青い空を見ているはず、と思った僕の10年はムダだったのか。
  
 
 
青空が急にかすんで曇り、僕は自分が泣いているのに気付きました。
 
 
 
ねぇ、君は死んでしまっていたんだね。僕はこれから、青空を見上げる楽しみがなくなってしまったよ。君も同じ青空を見上げているかもしれない、という期待が僕のささやかな喜びだったのに。
 
  
 
ねぇ、何で死んでしまったのだろう、死ぬ前に僕に連絡をくれてもよかったじゃないか。僕が君を思う10年はムダになってしまったじゃないか。
 
  
 
 
今日も空は青かったです。どこまでもどこまで空は青かったです。僕の後悔が彼女に届け、と願いたくなるくらい、空の青は突き抜けていました。

 
 
 


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